今日紹介する本は、大学生くらいの若者向けに書かれている。
だからあなたが若者ならばすぐに読めばOK!
動画2.0 VISUAL STORYTELLING (NewsPicks Book)
本記事は、28~42歳に向けて書いた。社会人になって10~20年経った人たちだ。
「動画2.0 VISUAL STORYTELLING(以下動画2.0)」のターゲットからは外れているっぽいので、
この層のひとたちは読まないだろうと思ったからだ。
でもこの世代こそ読むべきだ。
映像業界だけに限らない、すべての職種に関係のある話だ。
そう思ったのでこれを書いている。
誰がこの記事を書いているのか?
僕は1986年生まれで、映像業界に入って9年ほどになる。
当初3年を制作会社で、残り6年をフリーランスとして主にAdobe AfterEffectsを使って過ごしてきた自分にとって、映像は主戦場であり多少なりとも他人に話ができるトピックだ。
フリーランスという生き方は、飽きっぽい僕の性質に合っていて、一つの仕事が終わったら次へ、それが終わればその次へと、常に進み続けざるを得ない。
その結果、振り返ってみればイラストを描いたりウェブサイトを作ったりゲームアプリを作ったりグッズを作ってネットショップをやったりしてきたわけで、映像分野において、ひとつのパートを突き詰めてやっていくいわゆる”その道のプロ”には敵わない。
フリーランスで培った能力
そんなどのパートをとっても専門家と言い切れない僕でも、
……というかだからこそ身についた感覚がある。
この先「オイシイ仕事」ができるのはどこだ?という嗅覚だ。
「オイシイ」というのはもちろん「稼げる」という意味でもある。
が、それ以上に「好奇心を満たす」という意味が含まれている。
どうやったらうまくいくのか誰も知らない。
定義からはじめなくてはならない。
思いもよらないアイディアが成功の鍵になったりする。
好奇心を満たせて、お金ももらえる。なんてオイシイんだ!
自分にとって面白いことがどこにありそうか、探し当てることで飽きのこない人生を送れている。
次は「動画」がやってくる
その嗅覚が最近嗅ぎ取っているのは、「動画」だ。
映像とは違う、「動画」。
根拠として、2014年~2015年の間にsimpleshowという解説動画の会社のお手伝いをしていた経験が大きい。
https://simpleshow.com/jp/
simpleshowは解説動画制作のリーディングカンパニーです。
(中略)
複雑なロジックをシンプルに再構築するフォーマット、創造性豊かなストーリー、そして計算されたサウンドエフェクトを駆使することで、難解で味気ないメッセージが、人々を引きつける解説動画に生まれ変わります!
僕はここで、8ヶ月の間に100本以上の解説動画を作った。
綿密に練られた制作ロジックは社外秘だと思うので明かせないが、
これまで作ってきた映像とは明らかに違っていた。
そんな経験があって動画2.0を読んだら、誰にでも分かる形でそれについて書いてあったのだ。
動画2.0 VISUAL STORYTELLING (NewsPicks Book)
今後5年で世界のあらゆるものが動画化する―。
そしてもう、誰も動画ビジネスとは無関係でいられない!
FaceBook、twitter、Instagram、NETFLIX……。
さあ、世界を激変させる動画ビジネスの大波に乗れ!
若者よ、チャンスをつかめ!
ONE MEDIA創業者が明かす、
動画時代を勝ち抜く全思考・全技術
著者・明石ガクトとは?
明石ガクトさんを知ったのは、どこからか流れてきたネタツイだった。
ワンメディア代表取締役の明石ガクトさん。
ロバート秋山のクリエイターズファイルにしか見えないんだけど… pic.twitter.com/G1eiOReXGu— 櫛野展正@クシノテラス (@kushinon) April 9, 2018
明石ガクト
1982年静岡生まれ。
2006年上智大学卒業。
2014年6月、ミレニアル世代をターゲットにした新しい動画表現を追求するべくONE MEDIAを創業。
多くのソーシャルメディアのコンテンツパートナーとして動画を配信中。
直近ではショートフィルム製作やデジタルサイネージでのコンテンツ展開も行っている。本書の著者プロフィールより
ONE MEDIAが制作している映像がこちら。
僕らがこれまで観てきた映画やテレビと違うことがわかるだろうか?
「映像」と「動画」の違い
本を引用していこう。
まずは「映像」と「動画」の違いについてだ。
スマートフォンという映像コンテンツを楽しめるデバイスが現れて、人類はテレビ以来の新しいスクリーンを獲得した。それは裏を返せば人類がそこに流し込めるコンテンツはテレビのものしかない、ということでもあったのだ。
映像のスクリーンは、映画から始まって、テレビ、スマホと移り変わってきた。
スマホが登場しても、再生されるのは従来テレビで流している映像のままだった。
その象徴として、著者はかつてドコモが失敗した「NOTTV」という事業を挙げる。
NOTTVとは、2012年~2016年に存在した9チャンネルのTV番組や映画がスマホで楽しめるというサービスだが、失敗の理由を次のようにシンプルに説明している。
「大きな画面で時間をかけて観る」ことに最適化したTV番組や映画を、スマートフォンで見せようとしたからだ。
スマートフォンは、ただ画面を小さくしただけじゃない。
人間が映像コンテンツに触れる時間のセグメントを細かくしたことが、スマートフォンがもたらした最も大きなインパクトだ。
たとえばTV番組の「情熱大陸」は一度に連続で観ることを前提に制作されている。
冒頭の1分では、誰のことを取り上げているのかすらわからないこともある。
一方で、facebookに流れてくるバズ動画は生活の中のちょっとした隙間に入り込んでくる。
ランチの待ち時間、トイレ、電車の乗り換え。
スマホで観る映像は、そのスキマ時間に見終えなければならない。
端的に言うとこれが「映像」と「動画」の違いだ。
情報の凝縮
著者は”ここに時間軸に対する圧倒的な「情報の凝縮」がある“と述べる。
情報の凝縮こそが、動画を動画たらしめるポイントだ。
この「時間の凝縮」を真っ先に体現したクリエイターたちがいる。
それがYoutuberだ。Youtuberが生み出した文法の一つに「ジャンプカット」というものがある。会話の間を極端に編集で削ぎ落とすやり方だ。
このテンポに慣れてしまうと、テレビ番組のテンポがかったるく感じてしまう。
youtuberがスターの小中学生にとっては、この時間の凝縮が当たり前の感覚になっているのだ。
先程紹介したONE MEDIAの動画も、短いけれどかなり情報密度が濃いことが分かると思う。
来るべき5G時代に向けて
2020年を目処に、現在4Gと言われている通信環境が5Gに置き換わる。
フルハイビジョンの映画1本が1.5秒でダウンロードでき、ネット中継の遅延が人間に感知できないレベルになる時代がやってくるのだ。
動画の需要はその環境に完全にマッチする。
スキマ時間に動画を視聴することに適応したひとたちのもとに、瞬間的にあらゆるコンテンツが届けられるようになる。
これまでの「映像」表現は、映画館などのごく限られた場所でしか受け入れられないだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=3-nZI6_lA_A
働き盛りの世代へ
僕らが生まれる頃にはすでに、一家に一台(もしくはそれ以上)カラーテレビがあり、2008年に16:9のハイビジョン放送が始まった。携帯電話の進化の中で生活し、スマホで激変した。
動画2.0を読むことで、デバイスの変遷の中で不変だった映像表現が変わってきていることに気付かされる。
明石ガクトさんは、それを無意識に受容している若い世代に「今がチャンスだ!」と投げかけている。
僕らの世代をジャンプして。
これは動画業界に限ったことではないと思う。
今後数年、「映画からテレビ」「携帯からスマホ」以上の変化が起きる。どの業界もインターネットで繋がっていて、ひとつのビジネスが変化すれば、それはあらゆるところに波紋のように拡がっていくはずだ。
働き盛りのはずが気づけば置いてけぼりに、なんてことにならないように、時代の変化の参考例として動画2.0を読むことをオススメする。
記事で引用した部分以外にも読むべきところはたくさんあるし、後半には具体的な技術論についても記されている。
次にどんなことが起きるのかを想像するのは楽しい。
できれば、ゲームのように仕事をしていきたい。
本書ではそこまで触れられていないが、思想家の東浩紀さんが自身が主宰するゲンロンの会報誌の中でグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)やゲームとの関連性を踏まえた論考を試みている。大山顕さんの「スマホの写真論」という連載も今回の記事にとても関係があって面白いと思う。
https://genron-tomonokai.com/genron/